集中講義 講義ノート

(大阪市立大学、2002.5.15-5.17

鹿島 薫

九州大学理学研究院地球惑星科学部門

講義の目的:

珪藻類を中心として、微化石を用いた第四紀古環境変動の復元について、その基礎から最近の研究動向までを、わかりやすく解説する。特に、問題の設定、調査計画の立て方とその遂行、試料の採取から処理、分類、そしてデータ・論文のまとめ方までと、実際の研究にすぐに役立つテーマを選んで、講義を進める。

講義の進め方:

全体が10課(原則として各90分)に分かれ、2課ごとにテーマが決められている。ただし、講義内容に付随したサブトピックスを各課ごとに定め、各講義時間中にそれについても解説を加える。

評価:

講義中における討論、配布した文献の読解、発表などの結果から総合的に評価を行う。

テキスト:

事前に配付した、講義ノートおよび資料集による。講義中にも適時資料を配付する。

その他:

質問などは、下記にまでe-mailで行うこと。

鹿島 薫 kashima@geo.kyushu-u.ac.jp

なお、本講義の講義ノートは、下記のホームページ上でも公開されております。

http://paleobio.kyushu-u.ac.jp/kashima/kashima.html

 

第1課、第2課 (5月15日午後)

テーマ1 第四紀の周期的な気候変動

このテーマの目的:

第四紀における地球規模の気候変動の概要を理解する。特に、氷河時代の発見から最近の学説までの歴史的な流れについてを中心とし、さらに今後の研究の展望についても言及する。

講義のキーワード:

第1課

氷河時代の発見(1837

氷河地形と氷成堆積物

古典的な氷河時代論

氷河時代の発見が進化論に与えた影響

ミランコヴィッチサイクルの発見(1914〜)

ミランコヴィッチサイクルの持つ独創性

西ヨーロッパの氷河時代観と東ヨーロッパの氷河時代観

深海堆積物からの気候変動の復元(1955〜)

酸素同位体比による気候変動の復元

いったい何が表されているのか。

エミリアニカーブの功罪

「標準」曲線への安易な対比がもたらしたもの

ミランコヴィッチサイクルの再評価(1979〜)

日本の研究者の役割

ミランコヴィッチサイクルの功罪

「標準」曲線への安易な対比がもたらしたもの(その2)

 第2課

ダンスガード・オシュガーサイクルの発見(1992〜)

氷床ボーリングコアの掘削調査

海洋大循環が世界の気候に与える影響

ダンスガード・オシュガーサイクルによる世界の気候変動観の変貌

ダンスガード・オシュガーサイクルの功罪

「標準」曲線への安易な対比がもたらしたもの(その3)

完新世には何が起こったのか

C14年代の暦年補正

将来の気候変動像とは

 

参考文献

インブリー・インブリー(小泉格訳)氷河時代の謎をとく.岩波現代選書35

増田 富士雄 リズミカルな地球の変動、「地球をまるごと考える3」 岩波書店

多田 隆 ダンスガード・サイクル、科学, 67, 597-605, 1997 (資料集を参照のこと)

多田 隆 数百年〜数千年スケールの急激な気候変動_Dansgaaard-Oeschger Cycleに対 

 する地球システムの応答、地学雑誌、107218-2331998 (資料集を参照のこと)

(サブトピックス)

文献を読むこつ(part1)  日本語の総説を読む

上記 多田論文を読みながら、普及書ではなく、学術的文献を読みこなすテクニックを修得する。

各自、事前に論文の要約をノートにまとめておくこと

(日本語と思って甘く見ると大変なことになる)

 

第3課、第4課 (5月16日午前)

テーマ2 珪藻分析の基礎知識

このテーマの目的:

珪藻群集を用いた古環境の復元について、その基礎的な事項を解説する

講義のキーワード:

第3課

珪藻とは

珪藻の特徴

単細胞藻類、光合成、基礎生産、生態系を支える生物

広範囲な生息域、種ごとの生息分布、環境指標生物

珪酸質の殻、珪藻の大きさ

珪藻分析の注意点

珪藻と環境

珪藻殻の運搬堆積過

珪藻殻の溶解・破壊

珪藻分析の手順

珪藻分析に必要な機材

実験室における分析

フィールドにおける分析

 

第4課

珪藻の分類

Hustedtによる分類の基本(1930〜)

Krammer and Lange-Bertalotによる変更点(1986〜)

最近の分類の混乱

我々の対応

(サブトピックス)

珪藻の分類をまとめた文献(主としてドイツ語文献)をどう読み進めるか。

資料集に配布した事例をもとに、そのこつを学習する。

 

第5課、第6課 (5月16日午後)

テーマ3 珪藻分析の事例

このテーマの目的:

珪藻群集を用いた古環境の復元について、その具体的な事例を解説する。さらに、最近の研究動向にまで理解を深める。

講義のキーワード:

第5課

日本海における堆積物の縞状構造と珪藻群集

沿岸ラグーンにおける堆積物の縞状構造と珪藻群集

珪藻群集から復元された日本各地の沿岸汽水湖沼における塩分変動

汽水環境における珪藻群集の特徴

汽水湖沼における珪藻の分布と珪藻殻の堆積過

ボーリングコア試料中の珪藻遺骸群集の変動

汽水湖沼における塩分変動がもつ意味とは

第6課

珪藻群集を用いた古環境の定量的復元

その基本

トルコにおける事例

参考文献

Dixit et al. Diatoms: powerful indicators of environmental change, Environmental Science Technology, 26, 23-33, 1992 (資料集を参照のこと)

Anderson Natural Versus Anthropogenic Change in Lake: the Role of the Sediment Record, Tree, 8, 356-361, 1993 (資料集を参照のこと)

(サブトピックス)

文献を読むこつ(part2) 英語の総説を読む

上記論文を読みながら、英語文献を読みこなすテクニックを修得する。

(未完の場合は、5月17日の午後に続きを行う)

 

第7課、第8課 (5月17日午前)

テーマ4 珪藻分析におけるデータのまとめ方

このテーマの目的:

珪藻分析をはじめとする、微化石分析では、分析結果のデータ解析、まとめ方が一つの課題となっている。本講義では、その現状と問題点について、各事項ごとにわかりやすく解説する。さらに、その成果の発表から論文のまとめ方までも解説を加える。

講義のキーワード:

第7課

現生珪藻におけるデータのまとめ方

生体殻と異地性殻の分布

種の多様性の変動

多変量解析

ボーリングコア試料におけるデータのまとめ方

珪藻の種群分類

塩分による分類  海生、海汽水性、淡水生

Phによる分類

流速による分類

百分比、定量分析

第8課

発表と論文のまとめ方

(サブトピックス)

英語による発表と討論

非英語圏の研究者としての、発表のこつを修得する。

自らの研究内容または興味を持つ事項をもとに、5-10分程度の発表を準備しておくこと。

(未完の場合は、5月17日の午後に続きを行う)

珪藻学のための英語文例集について

(資料集を参照のこと)

 

第9課 (5月17日午後)

文献講読・発表の続き

上記課題の未完部分について、補足を行う。

その他、補足すべき事項があれば、追加説明を行う。

 

10課 (5月17日夕) 地学談話会にて講演

テーマ5 

トルコ中部の内陸高塩性湖沼群における珪藻群集とその古環境復元への応用

このテーマの目的:

1991年から継続している、トルコにおける海外学術調査の概要を述べる。

特に、内陸性塩性湖沼という日本には存在しない環境を用いて、第四紀後期の古環境復元を行った過程を紹介する。

講義のキーワード:

なぜトルコに注目するのか

塩性内陸湖沼における第四紀後期の古環境復元

強塩性湖沼における珪藻群集の分布

第四紀後期における水位変動、塩分変動

環境変動と遺跡立地

(サブトピックス)

継続的な海外学術調査をすすめることの重要性について

現地語を習得することの重要性について