現在の研究について

第四紀の気候変動・環境変動の復元

三方湖におけるボーリング調査

 最近約10〜20万年間の気候変動・環境変動について、主として生物指標を用いて復元する研究を行っている。この時期は、第四紀氷河時代でも最も世界的な気候変動が激しかった時であり、また、原人・旧人・新人へとつながる人類史の中で、最も重要な分岐点にあたっている。気候変動・環境変動を探るための生物指標の中で、筆者は特に、珪藻化石に注目している。珪藻は単細胞の藻類のひとつであるが、あらゆる水域に生息し、また塩分、pHなど環境のわずかな変化にも対応して、その群集構成を大きく変化させることが知られている。そして、その殻が堆積物中で保存されやすいことから、過去の環境を探る指標として極めて有効であることが、これまでの研究から明らかにされた。

 現在、次のテーマについて調査を進めている。

 まず、乾燥・半乾燥地域の湖沼堆積物の解析から、過去の気候変動(降水量・気温など)を復元する研究である。これはトルコを調査地域とし、その内陸湖沼堆積物を採取し、多種の分析によって、総合的な古環境の解析をめざす、トルコ・日本・フランスなどの国際研究プロジェクトである。乾燥・半乾燥地域には、流出河川の無い湖沼が多く分布するが、これらの湖水位の変化は、過去の降水量・気温などの変化を示している。筆者は1991年から現地調査を始め、これまでに珪藻化石を指標として、過去の湖水位、塩分を定量的に復元することに成功した。トルコ中部のトウズ湖・セイフェ湖において湖底堆積物の掘削調査を行った。この結果、最近2万年間の乾燥湿潤の変動、降水量・降水形態の変動を復元することができた。

 次に、沿岸域、ラグーン域、塩性湿原などの環境変動・自然災害に関する研究である。これらの地域の環境変化は、気候変動、海水準変動、地震活動など、多くの環境要素の影響を反映しているものであり、それを高い精度で復元することが、急務とされている。1996年度は北海道東部の海岸湿原、浜名湖、宍道湖・中海ほかの汽水湖沼で現地調査を行い、最近数千年間の古環境変動・海水準変動について研究を進めた。その結果、最近3000年間に複数回の周期的な環境変動・海水準を認めた。また、浜名湖では1498年における明応地震に伴う環境変化を、湖底堆積物の珪藻化石の研究より明らかにした。また、これらの湖では年周期堆積構造が認められるものがあり、これらの解読より、高精度の古環境解析についての基礎的な研究を進めている。